top of page

絨毯は動いている

今日の福岡はマラソン日和(小雨が降って寒い)ですこんにちは。

たいそうなタイトルですが、おつきあいください。


先日、ブログにのせるために自分のバルーチの写真をクラウドの中から探したのですが、その時にみつけたのがこれ。




あまりきれいに撮っていないし、背景なども適当なので、たぶん掃除のついでに「はーうちの子きれいだなー」と思って写真に残したのだと思われます(愛は重め)。


カフという、小さな田舎町で作られた絨毯です。

伝統的なデザインですが、当時の他のカフの絨毯に比べ、ものすごくクオリティの高い一枚。

茶系で、写真で見たり正方向から見たりすると地味、でも実際は金色に輝くふしぎな絨毯です。

色もですが、デザインがものすごく個性的……というか、ぐるんぐるんしているというか……。

拡大してみていただくとわかるのですが、目の錯覚を起こすような、強烈なデザインをしています。

さまざまな形の鳥のモチーフを、これでもかと変形させてつめこんで、メダリオンやランプを作り、さらに隙間という隙間に鳥を配していく、「どんだけ鳥が好きなんだよ! どんだけ余白が嫌いなんだよ!」と叫びたくなるくらいのデザイン。

はじめてこれを見たとき、「エッシャーだな!」と思ってしまったくらいです。

※エッシャー……だまし絵でよく知られるドイツの画家(wiki調べ)


でもそういう強烈なデザインや、地味な茶とぴっかぴかな金という色の二面性が好きです。

ちなみにウールもヴィレッジ(田舎で作られた絨毯)ものとしては破格の手触り。

掌でなでるとすべすべ、指先で触るとふわっふわなんですよ! ふわっふわ! 好き!


持っていたのは私がとてもとてもお世話になった、絨毯の生き字引みたいなイラン人の方でした。

彼の事務所へ行くたびにこの絨毯を引っ張り出して愛でていたのですが、こちらも独立の際、お祝いにとプレゼントしていただきました。嬉しくて涙が出たものです。


このカフという町は、もう絨毯を制作していません。

20年ほど前のことですが、「絨毯を作るよりお金が手に入る仕事ができたから」とのこと。

ゴムやプラスチックの工場が町の近くにできて、絨毯を織っていた女性たちがそちらに転職したのだそうです。お給料も良いらしく、そりゃそうなるよねえ、と妙に納得したのを覚えています。


ペルシャ絨毯はイランの代表的な工芸品で、「伝統」、「遊牧」といったワードと合わせて語られます。それは決して間違いではなく、その通りなのですが、決して固まった、いつまでもその状態であるものではありません。

現地の女性たちの転職でカフの絨毯はもうありませんし、昨日お見せしたバルーチも、遊牧の放棄や天災などで色やウールの質、デザインが激変し、数もどんどん減ってしまっています。

消えていった産地の絨毯をいくつも見てきましたが、このカフもそのひとつ。

思い入れの強い絨毯です。



15年ほど前に、ライオンラグの本を共著という形で上梓したのですが、このライオンラグもデザインや色、質、そしてマーケットもふくめて大激変しています。



玉木康雄、上木原理英『ライオンラグー知られざるイラン遊牧民の手織絨毯』東京、アートダイジェスト、2007年



日本の伝統工芸と同じように、ペルシャ絨毯も時代に合わせて変化し、そして場合によっては消えていくものなのですね。


いつまでも変わらないでいてほしい、けれどそれはかなわない。

そういうちょっと身勝手な切なさは、ペルシャ絨毯をより奥深くしてくれているような気がします。






 
 
 

コメント


bottom of page