バルーチの絨毯・1
- ROUME 上木原

- 2022年12月13日
- 読了時間: 4分
こんにちは。どんどん寒くなってきて、熱燗の頻度が高くなってきました(個人的に)
今日からは、おいしいほかほかの熱燗にも負けないくらいあたたかなバルーチの絨毯について書いていこうかなと思います。

黒みがかった深い赤が特徴のバルーチの絨毯です。
写真に撮ると色が褪せて見えたり、逆に黒ずんで見えたりと、本当にうまく色が出せないんですよねバルーチは……。もし色を重視してバルーチをお求めになるときは、ぜひとも一度実際にご覧になってみることをお勧めします。いやほんとに。違いが「すごい」を通り越して「ひどい」こともありますので、トラブル防止のためにも。
写真ではうまく出ないバルーチの赤は、ヨーロッパでは長く称えられてきた色です。コレクターも多く、バルーチ関連の書籍も比較的多くあります。それだけ、バルーチの色やデザインは多くの人の心を捕らえていたのでしょう。物にもよりますが、きちんと染織され、きちんと時を経てきたバルーチの赤は、とても深い色をしています。ザクロの実のような、ザクロよりもっと深く濃いような、なんとも言えない赤。ワインがお好きなお客様に「年経た赤ワインをグラスに透かしたような色」と言われたこともあります。
このタイプの絨毯は、えんじのような赤と、黒もしくは紺、そして白の3色のみで作られています。
これだけ色数が少ないと平面的な印象になりがちですが、そうはならないのがバルーチマジック。
赤と黒がたがいに影響しあってより深い赤に見えたり、赤と白が影響しあって白の部分がふわりと浮き上がるように見えたりと、ふしぎな変化が起きるのです。
これに光の影響(角度とか、太陽光か電気の灯りかとか)も入ると、さらにさまざまなニュアンスが見られるようになって、なぜだか本当に飽きません。ある程度踏むと、パイルのウールに艶が出て、またそれも複雑に光を跳ねかえします。すると、見る角度によって色が変化します。つまり、立って見たときと、寝っ転がって見たときの色のニュアンスが違ってくるのです。驚きです。
寝っ転がって見ると、毛先がつやつやと金色に光って、それがもともとの赤色の上に散らばって、なんとも言えずきれいです。私はこのタイプのバルーチの絨毯をヨガマット代わりに使っているのですが、その金色のきらきらを見るたびに「はぁ~~~~……(満足)」という気もちになります。

白の部分があることで、赤と黒という濃い色をつかっているにもかかわらず、暗い雰囲気にならないのもすばらしいです。白い、染めていない羊の糸が、ぱきっと全体を明るくし、雰囲気をよりシャープにしています。
ちなみに、エッジの部分はヤギの毛です。さわるとちくちくざらざらするので、よくわかります。古いバルーチの絨毯はエッジにヤギを使うことが結構あって、「遊牧の時のヘビ除けのため」「ヘビはちくちくするヤギの毛だと絨毯に上がってこないから」と聞いたことがあります。遊牧民の生活の知恵なのかもしれませんね。

いろいろなタイプのデザインがあるバルーチ族の絨毯ですが、このタイプはパネルのような直線的なデザインを組み合わせ、どこかモダンでシャープな印象があります。縦横比の違う長方形の中に、トルクメニスタンの絨毯の時にもお話したギュルを入れて組み合わせ、その周りをさまざまなボーダーで囲った、かっちりとしたデザインです。
個人的に、バルーチの絨毯の中では、このパネルタイプのデザインが一番なじみ深いです。個人的にも一枚持っていて自宅で毎日見てますし、修行中に、このパネルデザインのバルーチを数十枚並べて遊んだり……ではなく、観察したりしていたので……!(今さらバレる当時の遊び)
慣れるまではぜんぶ同じに見えましたが、一枚一枚、色や織り、細かな意匠に違いがあって、それが分かりだすととても面白く思いました。懐かしい、二十年ほど前の話です。当時はこのデザインだけでも数十枚はストックがあったのです……。今はもうムリ……。
今回展示したバルーチは、状態や色から判断して、1970年代頃の制作だと思われます。
作られて50年ほど経っているとは思えないコンディション。パイルもしっかり残っていて、部分的な擦り切れもほとんどありません。
当時のバルーチ族は、現金収入を得る手段として絨毯を作ることが多く、そのためできあがった絨毯を使うことなく保管していたといいます。おそらくそうやって眠っていた絨毯なのでしょう。デッドストックに近いかもしれません。
2へ続く


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