トルクメニスタンの絨毯・2
- ROUME 上木原

- 2022年12月8日
- 読了時間: 4分
こんにちは。福岡はとっても寒くなってきました……寒いのが苦手なので、この時期は本当に冬眠したくなります。これはもう、おいしいお酒で温まるしかない……!(単なるお酒好き)
阿呆なことを言ってないで、先日の続きと参りましょう。
前回はこのトルクメンのすてきなさわり心地のお話をしていました。今回はもう少しデザインについてみていきたいと思います。

この絨毯のボーダー部分になります。
中央のギュル(ひし形模様のこと)を並べたフィールド部分を、額縁のようにとり囲んでいるのがこのボーダーと呼ばれる部分。センターのメインボーダーと呼ばれる太めのボーダーを、細い何種類かのサブボーダーがとり囲んでいます。
サブボーダー自体も、羊の角のような文様をあしらったやや太めのボーダーを、赤地や白のライン、規則的に色が変わる横ストライプのボーダーが対称にとり囲んでいて、整った感じです。それがメインボーダーの右と左に対称であるわけで、なんとも計算されつくしてる。
これは遊牧民の絨毯でよくみられるボーダーの構成ですが、トルクメンの場合は幅のあるものが比較的多いこともあり、ボーダー部分の存在感がありますね。ちょっと日本の十二単の襲のようなイメージもあるでしょうか。日本はいろいろな色を重ねて、その変化やニュアンスを楽しみますが、このボーダーはデザインを重ね、その変化で楽しませてくれています。
トルクメンに限らず、ペルシャ絨毯はどうしてもフィールドのデザインに目が行きがちですが、個人的にボーダーのデザインがペルシャ絨毯の雰囲気に及ぼす影響はとても大きいと思います。
このトルクメンもそうです。
フィールドと同じ色を用いて統一感をもたせつつ、フィールドよりも繊細に色を変え、緻密に文様を織り込むことで、フィールドの存在感をより浮き立たせているように思います。どっちも細かい、どっちも大胆、となるとメリハリがなくなってしまうことが多いんですよね。対比って大事です。

ちょっと見切れちゃってますが、フィールドとボーダーの対比はわかりやすいかな?
壁だと両方がしっかり見えますね。床に敷いて、上にテーブルを載せたりすると、フィールド部分が隠れてボーダー部分が良く見えるようになります。すると、とたんにボーダーの繊細さ、緻密さが際立って見えて、それもペルシャ絨毯の楽しいところです。

前回ちらりとお話しましたが、この文様を「ギュル」といいます。
これはテッケ・ギュルという種類で、トルコやイランにもさまざまなデザインのギュルがあります。
このギュルは、日本でいう「家紋」みたいなものだと言われています。テッケ・ギュルは、トルクメニスタンの一大部族であるテッケ族が、自らの一族の印として用いていたものだとか。直線だけのシンプルなデザインながら、印象に残るデザインですよねえ。昔の人のセンスって本当にすごい。
そういえば、このギュルのデザインの絨毯について、「テッケ・ギュルってことは、テッケ族が作ったんですか?」と聞かれることがあります。
私は、その可能性もあります、とお答えすることにしています。他の可能性もあるからです。
前回も書いた通り、遊牧民にとって、絨毯は大切な収入を得る手段のひとつです。部族によっては積極的に情報を集め、人気のあるデザインや色、サイズの研究などもしていたといわれるくらい、力を入れて作っていたでしょう。そういう背景を考えると、「テッケ族のデザインはすてきね! よく売れるみたいだし、使ってみよ!」みたいな他の部族の織り子さんがいても不思議ではないと思うんです。一方ではもちろん、「誇りをもって、我が一族の家紋を使います!」みたいな織り子さんもいたでしょう。この絨毯はどちらのタイプの人が作ったのかなあと考えだすと、なかなか止まらないものがあります。
実際、今回のイベント会場でこのトルクメンの絨毯を壁に飾って、しみじみと眺めながらお客様とそんな話で盛り上がりました。お茶菓子は絨毯。コロナがなければ、良い香りの紅茶をいれたかったなあ。
遊牧民の絨毯でも、ペルシャ絨毯でも、作り手にはいろいろな人がいます。
上手な人、発想力のある人、ていねいな人、性格もその背景に抱えるものもそれぞれでしょう。
「テッケ族」とか「イスファハン」とかくくるところからもう一歩踏み込んでみると、もっとリアルに、その絨毯に関わった人たちの息遣いが聞こえるような気がします。
そんなことを、このトルクメンの絨毯を楽しみながら考えました。


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